パリジェンヌ

パリは、19世紀後半にオートクチュールを生み出した都市。ムッシュディオールの尽きることのないインスピレーションの源です。

「人はパリの空気があれば、ファッションの空気を吸い込める」

- クリスチャン・ディオール

パリのモニュメントと街路の建築的な要素や名前を、自身のデザインに数多く取り入れたムッシュ。しかし、フランスの精神を象徴し、ディオールのシルエットに気品をもたらす彼のミューズは、パリの女性たちをおいて他にありませんでした。「現代の女王たち！私たちの誇り高きミューズ。私たちがすがり、妬み、愛し、あがめるエレガントな女性“パリジェンヌ”…」と熱っぽく語るムッシュディオールは、「パリジェンヌが愛する有名なリトルブラックドレス」を、いつの時代も変わらぬスタイルマニフェストだと考えていました。

クチュールの神髄をとらえたアーカイブ写真の数々には、ムッシュのパリへの愛が反映されています。ウィリー・メイワルドが1955年にセーヌ川のほとりで撮影したアイコニックな写真では、複雑さと純粋さが融合した「バー」スーツが披露されました。そしてもちろん、パリは、ケマラケやロワイヤル通り、建物の落ち着いた佇まいに魅了されて1946年にメゾンを創設したモンテーニュ通り30番地など、クリスチャン・ディオールにまつわるそれぞれの場所において体現されています。こうしたこだわりはモデル選びにも表れていました。彼はモデルたちをとても大切にしており、気高き「フランス」もその一例でした。「誘惑的なドレスをまとった彼女は、とりわけ素晴らしく見えました。(…) 私は好んで、フランスやパリと呼ばれたドレスの番号を彼女に任せました。いつも話題の的になり、大好評を得たものです (…)」